少し前に、自分が撮影した写真を Mac の Lightroom 5 から印刷してみたところ色合いがどうにもオカシイ。同じプリンタ・用紙の組み合わせで普段は Windows の Lightroom 5 から印刷しており、その場合は問題無いので、カラーマネジメントの設定ミスだとすぐに分かりました。 Windows 環境でカラーマネジメントに手こずるとはよく聞く話ですが、 Mac で手こずるとはあまり聞かない話。ネット上で情報を検索してもあまりヒットしません。そんなこんなで結局、正しく設定し直すまで長いこと格闘することになってしまいました。今回は、 Mac からの写真印刷におけるカラーマネジメントの設定手順を記します(おまけで Windows の場合もある程度カバーしています)。
なお本記事で説明しているのはソフトウェアの設定だけであり、カラーマネジメントの「一部」でしかありません。というのも、ソフトウェアはハードウェアの現状(経年劣化の度合いなど)を厳密に把握できないため、ハードウェアが理想的なコンディションにあることを前提に動作します。したがって厳密にカラーマネジメントを行うには、ソフトウェアのカラーマネジメント設定を行った上で、ハードウェア(つまり物理的な発色)のレベルでも計測・調整が必要になります。そちらについては、私の能力を超える話なので本記事では扱いません 😛
はじめに
雑に説明すると Mac/PC からの写真印刷におけるカラーマネジメントとは、次を行うことです:
- Mac/PC のディスプレイに表示されたある写真の色合いと、
- プリンタで印刷したその写真の色合いが、
- 同じになるようにディスプレイとプリンタの調整をすること
機材の性能や特性が関係してくるので、最適な設定は使う機材により異なります。また「ディスプレー・プリンタそれぞれの性能で可能な限り色合いを合わせる」ことになるため、使用機材が色に無頓着な場合(例:安さがウリの製品)、いくらカラーマネージメントの設定をしても恩恵はありません。たとえば「AdobeRGB カバー率が xxx」といった宣伝文句を使っているディスプレイなど、映像系のプロやハイアマ向けの機材を使っているのであれば、試す価値は大いにあります。
さて、以後の説明に関わってくるので参考までに今の私の機材を以下に書いておきます(「カラープロファイル」欄については後述):
機種 | カラープロファイル | |
---|---|---|
Macのディスプレイ | MacBook Pro Retina の標準 LCD | 標準インストールされる「カラー LCD」 |
Windows のディスプレイ | EIZO S2242W | S2242W Custom 6500K G2.2 |
プリンタ | Canon PIXUS MG6530 | (印刷用紙に合わせて選択) |
印刷用紙 | キヤノン写真用紙・絹目調 L判 (SG-201L50) | Canon MG6500 series SG2/LU2 |
設定手順の概要
およそ次のような手順で設定できます。
- 適切なカラープロファイルを入手
- Mac/PC に、ディスプレイ用のカラープロファイルを設定
- Lightroom で、プリンタと用紙に合わせたカラープロファイルを指定
- プリンタドライバに、カラーマネジメントを行わない設定を実施
- Lightroom で、印刷用紙を設定
手順4について補足しておきます。カラーマネジメント設定は「色の調整」を行うものなので、画像データが Mac/PC のハードドライブから読み出されてから紙に印刷されるまでの間にキッチリ一回だけ行う必要があります。さもなければ、複数回の調整が行われた結果「調整しすぎ」て色合いが逆に壊れてしまいます。そのため、Lightroom でカラーマネジメントを行うよう設定した場合、プリンタドライバが色調整しないよう設定する必要があります。
以下、順を追って各手順を説明していきます。
1. 適切なカラープロファイルを入手
Mac/PC の設定を行う前に、適切なカラープロファイルのデータが記録されたファイルを入手する必要があります。カラープロファイルはその機材が表現できる色の範囲(どこまで鮮やかな緑を出せるか等)など色に関する性能や特性が書かれたものであり、ほとんどの場合は機材のメーカーが Web でダウンロードできるよう公開していたり、製品同梱 CD に入っています。
まずディスプレイについて。Mac で外付けディスプレイを使用しない場合、最初からカラープロファイルは Mac に入っており、また設定も正しく行われているので何もしないで OK です。 Windows の場合、ノート PC や一体型 PC などであればメーカーがカラープロファイルを最初から設定してくれているかもしれません。外付けディスプレイを使用する場合、お使いのディスプレイメーカーの Web サイトでカラープロファイルのファイルを探して入手します。なおカラープロファイルは「ICCプロファイル」とも呼ばれ、そのファイル名は「.icc」で終わるのが通例です。このことを頭に入れておくと探しやすいと思います。
続いてプリンタについて。Canon製やEPSON製であればプリンタドライバをインストールすると同時にカラープロファイルがインストールされているはずです。探す必要は無いでしょう。すでにインストールされているか確認する方法は、後で説明する「カラープロファイルを設定する」の他のメーカーの場合は、私には分かりません…メーカーさんに相談してください。
ところで。最初に「適切な」カラープロファイルと書きましたが、実は使用機材用のカラープロファイルであれば何でも良い…というわけではありません。プリンタのカラープロファイルは使用する印刷用紙ごとに分かれているのが普通です。そのため、プリンタのカラープロファイルをダウンロード等する場合は、自分が使っている印刷用紙タイプに合わせたカラープロファイルを選んでおく必要があります。Canon製、EPSON製の場合は以下のページで確認できるようです(2014-11-05現在)。
ちなみにプリンタメーカー純正のインクと用紙を使わない場合、メーカーが提供しているカラープロファイルは使えません。自分で専用機材を買ってカラープロファイルを作成してください(ハードウェアで発色を計測・調整するのだそうです)。
2. Mac/PC に、ディスプレイ用のカラープロファイルを設定
使用すべきカラープロファイルのデータを入手しましたら、次は Mac/PC にディスプレイ用カラープロファイルを設定します。
Mac で外付けディスプレイを使っていない場合、最初からカラープロファイルが正しく設定されているため何もする必要はありません。
Windows 7 でディスプレイ用のカラープロファイルを設定する場合、次の方法で行えます:
- コントロールパネルで「色の管理」を開く(右上の検索窓に「色」と入れるとすぐ見つかります)
- 「デバイス」タブの「デバイス」欄でカラープロファイルを指定したいディスプレイを選択する(もしカラープロファイルが一覧表示されている場合、そのディスプレイ用のカラープロファイルの関連付けがすでに行われています。その場合、以後の操作は無用です)
- 「このデバイスに自分の設定を使用」をチェックし、下のリストに使用ディスプレイ用のカラープロファイルを追加する(「追加」ボタン押下後の画面に正しいプロファイルがリストアップされなければメーカー配布の「.icc」ファイルを直接指定して追加します)
3. Lightroom で、プリンタと用紙に合わせたカラープロファイルを指定
続いて、Lightroom にてプリンタ(+印刷用紙)に合わせたカラープロファイルを指定します。
Lightroom の印刷モジュールを開き、「カラーマネジメント」欄でプリンタ用の(カラー)プロファイルを選択してください。繰り返しになりますが、カラープロファイルはプリンタの機種だけでなく用紙や印刷設定によっても変わります。たとえばキヤノンの「絹目調」の写真用紙に品質「きれい」で印刷する場合、「SG2」という名前の入った用紙を選択します(SGが絹目調、2が品質「きれい」に対応するらしい)。私の環境の場合、「Canon MG6500 series SG2/LU2」というプロファイルが該当します。誤ったカラープロファイルを選択すると逆に色合いが不自然になりますので注意してください。
4. プリンタドライバに、カラーマネジメントを行わない設定を実施
最後に、プリンタドライバでカラーマネジメントを行わないよう設定します。Lightroom の印刷モジュールの左下にある「ページ設定」(Windows の場合は用紙設定)ボタンを押してプリンタドライバの設定画面を開きます。そして「カラー・マッチング」という項目を開き、無効化(MG6530 のドライバの場合は何も設定変更できない状態)されていることを確認します。無効化されていれば、プリンタドライバが色合いを調整することはありません。
なお Windows の場合、(知っている限り Canon・EPSON 製プリンタの場合は)カラーマネジメントを行わないような設定を手動で行う必要があります。MG6530 の場合、印刷設定画面の「基本設定」タブの「色/濃度」欄で「マニュアル調整」を選択し、色合いの設定画面を開くと色補正を行わないよう設定できます。このあたりの操作はプリンタドライバによって千差万別なので、お使いのプリンタ機種で同じような設定箇所が無いか探してみてください。
5. Lightroom で、印刷用紙を設定
最後に、プリンタ用のカラープロファイルに合わせて用紙設定(と印刷設定)を行います。
プリンタドライバの設定画面にある「品位と用紙の種類」という項目で、先ほど Lightroom 側に指定したカラープロファイルに合わせた用紙指定・印刷設定を行います。私の場合は用紙の種類として「写真用紙 絹目調」を選び、かつ印刷品質を「きれい」にする、という具合です。
後書き
以上で設定完了です。以上の設定を行った環境であれば、ディスプレイで表示される色合いと同じ色合いで印刷されるはずです。もし色合いが明らかにおかしい場合、何か設定ミスを行っているか、機材に何かの問題があるかもしれません。
ちなみに、私が何を間違えて格闘していたのかというと、実は「絹目調と言っても写真用紙だし、普通の光沢紙と同じで良いだろう」と思い込んで「光沢紙」を選択していたことが原因でした。用紙を選択し間違えるだけで、かなり派手に色合いが変化します。他の方が同じ轍は踏まないよう願っています… 🙂
どなたかの役に立てば幸いです。いじょー。