夜景撮影では露出時間を長くする(シャッタースピードを下げる)ことが多いですね。もちろん私が夜景撮影をする際もそうするのですが、そのとき撮影直後しばらくカメラが操作不能になることがあります。いや「ことがある」ではなく、露出時間が長いと確実にそうなることが経験的に知っています。この現象は「長秒時ノイズ低減機能」なるものによって引き起こされています。最近この機能について少し勉強しましたので、分かったことを今日は書いておきます。
長秒時ノイズとは
「長秒時ノイズ低減」とは、露出時間が長くなった場合にだけ特徴的に発生するノイズです(発生原因は話が逸れるので割愛)。映像的には、写真の暗い部分に「カラフルな点がバラバラと現われ」ます。また露出時間が長くなれば長くなるほどノイズが強くなっていくのも特徴です。この投稿の冒頭にある画像は60秒という長い露出時間で撮影したものの一部分を等倍表示したものですが、ハッキリと不自然な「点」が現われているのが分かると思います。ちなみに、ここまで派手にノイズが発生すると全体表示でもハッキリ分かります(画像クリックでフル解像度の全体画像が見られます)。
このノイズには、以下のような特徴があります。
- 高感度ノイズ(ISO感度の上げすぎで発生するノイズ)とは別物
- RAWデータのレベルで存在するノイズ
- 撮影後の現像処理では効果的に除去できない
特に3点目は重要で、派手に発生した長秒時ノイズは現像処理でキレイに除去することができません(私がAdobe Lightroom, Olympus Viewerを使ってトライした限り)。逆に、カメラの長秒時ノイズ低減機能を有効化すると、このノイズは非常に効果的に低減できます。冒頭の写真を、長秒時ノイズ低減機能を有効化して撮り直した写真が次です。
私の感覚では、ほとんどノイズが無いと感じます。効果は明らかですね。これは60秒と露出時間が非常に長い例ではありますが、もしここまで長い露出時間で撮影するのであれば、絶対に「長秒時ノイズ低減」機能は有効にしておくべきでしょう。
「長秒時ノイズ低減」機能のデメリット
画質だけを考えた場合、長秒時ノイズは後処理で軽減できませんから「長秒時ノイズ低減機能」は常に有効化しておくべきです。しかしこの機能、一つ大きなデメリットがあります。それは「撮影後、露出時間と同じ時間だけカメラが操作不能な状態になる」ことです。シャッターチャンスを逃しかねないですし、ただ待ち続けるだけでもストレスです。そのため露出時間が短い場合は、撮り心地が悪くなるので使わない方が良いでしょう。とはいえ、写真を撮るたびに設定を切り替えるのは面倒ですし、忘れてしまうこともあるでしょう。そのためカメラに「長秒時ノイズ低減機能を露出時間に応じてOn/Offする」ような機能があれば、楽で良いですね。OLYMPUS E-M1にはその「オート設定」があり、4秒以上で長秒時ノイズ低減機能を有効化してくれるようでした。
余談。ところでOLYMPUS E-M1のマニュアルには以下の記述があります。
・処理のために約2倍の撮影時間がかかります。
E-M1では「約2倍」。会社の後輩が使っているNikon D7100でも「約2倍」とのこと。何となく、ノイズ低減の方式に由来していそうで気になります… 🙂
露出時間の長さと、発生する長秒時ノイズの量
とはいえ、どの程度の露出時間であれば長秒時ノイズ低減の機能を有効化するべきなのでしょうか。ノイズ発生量はカメラの機種により異なりますので、最終的には自分のカメラと自分の感覚で実験するのが確実だと思います。というわけで、実験してみました。以下、露出時間の長さごとに長秒時ノイズ低減機能を使う場合と使わない場合を比較した画像を掲載します。各写真の左半分は長秒時ノイズ低減機能をオフにして撮影した写真、右半分はオンにして撮影した写真になっています。なお異なるシャッタースピードで同じ明るさになるよう絞りがそれぞれ異なっていますので、ノイズ量だけを参考にしてください。
露出時間「5秒」での実写サンプル
ほとんどノイズらしいノイズが私には見えません。ノイズ低減機能を使う必要は無さそうな印象です。
露出時間「25秒」での実写サンプル
全体的にはノイズらしいノイズが見えませんが、高圧線と、その左に写っている手前の電信柱との間に異常な輝点が数カ所見えます。
露出時間「60秒」での実写サンプル
全体的に異常な色の輝点が現われており、正直、見れたものではありません…。
実写サンプルに対する私感
2L版程度の用紙での印刷するならば、25秒でも長秒時ノイズは何とか許容範囲かなと私は感じます。しかし後でノイズに気付いて「長秒時ノイズ低減機能を使っておけば良かった」と後悔しそうな気もしますので、オート設定をしておくのが良さそうです。
まとめ
露出時間が数十秒といった長さになる場合、長秒時ノイズ低減機能はかならず有効化すべきです。逆に数秒というオーダーで、かつレスポンス性が重要な場合にはISO感度を上げるなどして露出時間を短くし、長秒時ノイズ低減機能をオフにする方が良いでしょう。