ある程度写真を撮ってきた方ならば気付かれているだろうと思いますが、まれに写真に写したモノの輪郭が不自然に「紫色で縁取られる」ことがあります。もちろん、肉眼ではそんな紫色の縁が見えない場合の話です。一部分の色味が肉眼と異なって写るわけですから、まあ発生しないで欲しい現象だと誰もが思うところでしょう。この現象を「パープルフリンジ」(purple fringe)と写真用語では呼びます。日本語に翻訳すると「紫の縁取り」ですね。
当然このような紫の縁取り(以後「紫フリンジ」とします)は現われて欲しくありません。が、発生原因は主に「軸上の色収差(*)」なるものであり、これはカメラ設定やレンズ調整などで撲滅できるものではありません。そのため、(1)紫フリンジが発生しやすい撮影条件を知っておくこと、(2)そのような条件下で紫フリンジの発生を抑える方法を知っておくことで、紫フリンジのある写真を作り出さないよう撮り手が努力するしかありません。次に、少々調べて分かった現象が発生しやすい条件と発生を抑える方法を記します。
- 紫フリンジが発生しやすい撮影条件:
- 前景と背景のコントラストが高い
- 白飛びしている
- 背景が曇った(または霧がかった)空である
- 紫フリンジの発生を抑える方法:
- 絞って撮る
- 白飛びを避ける
撮影条件として最悪なのは、暗い物を曇り空を背景に撮影するようなシーンですね。私が紫フリンジを発生させたケースはみな木を見上げて撮影するようなシーンばかりですので納得です。発生を抑える方法としては、シーン次第では白飛びを避けられないので適度に絞って撮ることが重要という印象です。私が紫フリンジを発生させた作例を調べてみると、確かにどれも(無駄に)開放に近い絞りで撮影していました。ちなみに本投稿の最初にある写真はf/1.4です(写真を始めたばかりで「前景の葉をボカすには絞りを開けるべし」とだけ考えて撮影)。
(*) 軸上の色収差とは、色成分ごとに光軸上の異なる位置で焦点が結ばれることを指します。光を屈折させるレンズ側の話です。ある周波数(色)の光成分について軸上色収差が制御しきれないということは、その色の光がイメージセンサーの手前(あるいは奥)に焦点を結ぶのですから、イメージセンサー面では正しいセルの周囲にあるセルがその光を受けることになります。つまり、あるセルのものとして記録されるべき色成分が別のセルの成分として記録されるので、色味が不正になります。
実験
さて、ものは試しということで。紫フリンジが発生しやすい絵を、絞りを変えつつ何枚か撮影してみました(撮影カメラ: OLYMPUS OM-D E-M1、レンズ: LEICA DG SUMMILUX 25mm/F1.4)。具体的には、逆光で白飛びさせた空を背景に木の枝葉やワイヤーを写すという、かなり作為的かつ退屈なものです。以下、各f値ごとの撮影結果のうち紫フリンジが派手に発生した箇所の等倍クロップ画像を並べていきます(画像クリックで全体画像を表示)。きっちり絞っておけば悪条件下でも紫フリンジ現象を抑えられること、絞らなければ良いレンズやカメラを使っても現象発生を避けられないこと、が分かると思います。
それではお楽しみ(?)ください。
f/11
f/11では、等倍で観察しても紫フリンジの発生を確認することはできませんでした。このような意地悪な条件で撮影しても、まったく問題なしでした。
f/9.0
f/9.0では、よく観察すると分かる程度ですが、紫フリンジが発生していました。が、気になるレベルではありません。
f/6.3
f/6.3では、紫フリンジの発生がはっきり感じられます。私の感覚では、写真全体を鑑賞する普通の使い方では問題にはならない許容範囲レベルだと思います。
f/4.0
f/4.0では、等倍で確認しなくともハッキリ分かるレベルで紫フリンジが発生しました。これほど発生していると気になってしまいますが、さほど写真に興味無い方であれば気付かないかもしれませんね。
f/2.8
f/2.8では、強烈に紫フリンジが発生しました。さすがにこのレベルで発生すると、即ゴミ箱行きですね…。
f/1.4
f/1.4では、発生に気付かない人はいないレベルで発生しました。もはやジョーク、目も当てられません。。。